僕は加奈子さんの肩を後ろから軽く叩き(やあ)と言った。
彼女も(まあ、正木君)と言った。
彼女は僕を覚えていた。
同じ学部だったもの。

僕はつかさず、(偶然見かけたから話したくなって)と言った。
加奈子さんも(最近誰とも話していなくって寂しかったから、昔話をしたいわ)と返した。

僕は駅前に屋台が出ているのを見て、そこに誘った。
給与の二日前だった。財布の中が寂しい。

お金がない

給与をもらった後だったら、もっと高級な所に誘えたのに。
そして帰りはタクシーとかしたのに。

今はおでん屋台で終電に間に合うよう帰るしかない。
おでんを食べながら、加奈子さんは(屋台のおでんって美味しいわね)と言った。
僕は(出汁を捨てないで、ずっと取っていて使うから色んな具の味が染みているからだよ)と言った。
彼女も(出汁にコクがある)と言った。

僕達は屋台で1時間ぐらい話した。
そして名刺交換した。僕は市役所の名刺、彼女は父親の会社の事務員をしているらしく、その名刺をくれた。
そして携帯番号も交換した。お互いにラインしようってなった。
彼女は最近話し相手がいなく寂しいらしい。

そしてそろそろ帰ろうとした時、意外な展開になった。
彼女が(もう1時間ぐらい、私の家で飲んで行かない?)と言ったのだ。

僕は自分の耳を疑った。